2026.9.15
えひめチャレンジ
【連載第1回】テーマ「買い物で未来を変えよう。」

環境課題解決型プログラム「えひめチャレンジ」
愛媛県が取り組む「ゼロカーボン(脱炭素)」に関する3つのテーマについて、議論を交えながらアイデアを創出し、ともに実装までを目指す全5日間のプログラム「えひめチャレンジ」を開催しました。
開催日:2026年8月21日(金)、22日(土)、27日(木)、28日(金)、29日(土)
参加したのは、愛媛県、関東、関西の大学生・大学院生24人。3つのテーマで計6チームに分かれ、楽しみながら自然と続けられるデカボアクションを考えました。本記事では、全5日のプログラムのうち、最終日のプレゼンテーションの内容を全3回で紹介します。
テーマ1「買い物で未来を変えよう。」
このテーマの課題は、「スーパーでの買い物」を例に、環境への配慮が見える商品を、県民が無理なく楽しく選びたくなる仕組みをつくること。「環境にいいから買う」ではなく、気がつけば「自然と選んでいた」と思える買い物体験を目指しました。2チームの発表を紹介します。
デカボスーパーAチーム
買い物を、人と出会うきっかけに

●発表内容
Aチームが着目したのは、スーパーを日常的に利用するシニア世代と、人とのつながりです。チームは、すでに環境問題に関心のある人にはデカボ商品を選ぶ理由が伝わっても、関心の低い人には行動を促しにくいと分析しました。デカボを買い物の目的にするのではなく、別の目的でスーパーを利用した結果、自然とデカボにつながる状態をつくろうと考えました。
そこで対象としたのが、日常的にスーパーを利用するシニア世代です。生活上のさまざまな不安の背景には、人と話したり、つながったりする機会の減少があると考えました。スーパーにはすでに多くのシニア世代が訪れているため、新たに人を集めなくても交流の場をつくれることも強みです。
一方、学生にも普段はシニア世代と接する機会が少なく、授業の空き時間などを地域で生かしたいというニーズがあります。こうした両者を結ぶ提案が、スーパーの一角に設ける交流カフェです。

環境に配慮した商品を購入したレシートを持参すると、カフェを1回利用できます。接客や企画運営には学生が参加し、利用するたびにスタンプを付与。5個集めると、学生と一緒に店内のデカボ商品を見て回り、商品について学びながら購入できる「デカボツアー」に参加できます。

この取り組みは、シニア世代には交流の機会を、学生には実践的な経験を提供します。スーパーには来店者数と対象商品の販売数の増加、地域の生産者には商品の認知向上、行政には脱炭素行動と世代間交流の促進という価値が生まれます。
まずは1店舗で運営方法やカフェの利用状況、対象商品の購入数を検証し、その後、県内のほかの店舗へ広げていく構想も示されました。「環境のために選ぶ」から「誰かに会いたいから選ぶ」へと、買い物の動機を変える提案です。
●審査員の講評
審査員からは、難しく受け取られがちな脱炭素を、交流や孤独という身近な課題と結びつけた点が評価されました。シニア世代、学生、スーパー、生産者、行政のそれぞれに価値があり、うまく運営できれば関係者全員にメリットのある仕組みとのこと。
一方、シニア世代が実際に学生との交流を望んでいるのか、より幅広く調査する必要があるとの指摘もありました。また、カフェを誰が運営し、学生が授業、ボランティア、仕事のいずれの形で関わるのかなど、継続に必要な体制の具体化も今後の課題とされました。
●学生の感想
学生からは、当初の案を巡って話し合いが平行線になったものの、メンバー同士の理解が深まるにつれて、交流カフェのアイデアが形になったという振り返りがありました。中間発表後には「自分たちが本当に実践したいこと」「自分たち自身がワクワクできること」をあらためて考えたそうです。
意見が違うときこそ思いを伝えることや、チームの雰囲気づくりの大切さを学んだほか、デカボは難しいものではなく、日常のさまざまな場所に入り口があると気づいたという声も聞かれました。
デカボスーパーBチーム
子どもの未来を考える「新しい食育」

●発表内容
チームはまず、課題にある「未来」という言葉を、遠い将来の地球環境ではなく、家庭にとって身近な「子ども」と捉え直しました。
注目したのは、子どもの食生活を大切にしたいと思いながらも、「何をすればよいのか分からない」「十分にできているか不安」と感じる子育て世代です。そこで、地産地消の商品を主な対象に、子どもが自分にも環境にも良い食を選べるようになる「新しい食育」を提案しました。

企画の中心となるのは、売り場のQRコードから参加できる食育診断です。5問の質問に答えると点数が算出され、家庭でできている点を肯定的に伝えながら、次に取り組める行動を提案します。診断結果をさらに良くする方法の一つとして地産地消の商品を紹介し、診断を繰り返す中で自然と商品を手に取る機会を増やします。
診断を知ってもらうため、子育て世代に親しまれているゲストと一般の来店者が一緒に参加するPRイベントも企画しました。地産地消の商品を購入したり診断を受けたりした子どもには、地域のキャラクターを使ったシールを渡し、イベント限定のデザインも用意します。子どもの「欲しい」「やってみたい」という気持ちを、保護者の買い物行動につなげる仕掛けです。

この取り組みによって、親子は食育と環境への意識を高め、スーパーは集客力を高めて地元商品の販売を伸ばせます。行政にとっても、関心はあっても行動に移せていない人を後押しする機会になります。将来は、地域全体で子どもの食と未来を考えるモデルへ育てることを目指しました。
●審査員の講評
審査員からは、食育を入り口にすることで、子どもの健康や未来、デカボ商品の選択、スーパーの事業を結びつけた点が評価されました。家庭で食を考える機会が増えれば、スーパーで食材を購入する機会にもつながるため、環境と事業の両面に効果が期待できるとのこと。
一方、診断を受けた後、地産地消の商品を実際に買いたくなるまでの導線をさらに具体化するとよいとの助言がありました。対象商品を使った簡単なレシピを提示することや、診断で得られた情報を個人情報に配慮しながら売り場づくりへ生かすことなどが提案されました。また、診断は食育への不安を抱える保護者が自分の取り組みを振り返り、誰かと話すきっかけにもなり得るという意見も出ました。
●学生の感想
学生たちは、条件の多い課題の中で、何を生かし、何を絞るかという取捨選択に苦労したと振り返りました。食育とは何かを整理し、地産地消と組み合わせたとき、家庭、スーパー、行政のそれぞれにどのような価値が生まれるのかを細かく考えたそうです。
異なる個性や考えを持つ学生とチームを組み、企業や行政の関係者に提案した経験は貴重であり、自分とは違う視点から多くを学べたという感想が聞かれました。
テーマ1「買い物で未来を変えよう。」のまとめ
2チームに共通していたのは、環境への関心だけを行動の出発点にしなかったことです。「人に会いたい」「子どものために選びたい」という思いが、スーパーでの自然なデカボアクションにつながる可能性を示しました。
第2回では、大街道商店街を舞台にした脱炭素イベントのアイデアを紹介します。